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s105 霊峰(石鎚山)

石鎚山を登ったのは、もう30年ほども前になる。
まだテント屋を営んでいた時で、絵を描く以前である。
子供達にせがまれて、宣伝も兼ねて
近畿、四国、山陰などひと月旅をした。
そんな折に訪ねたのだが、
とても立派な鎖場が印象深かった。
その鎖場を登り頂上で休んでいると、
後から三人の山伏が登って来た。
彼等は祠に礼拝すると、
夜が明けたばかりの虚空に向かい、
一人が螺貝を吹き始めた。
そしてもう一人が太鼓を打ち鳴らす、
もう一人が錫杖を振る。
頂上には私達だけである。
雲海の上に彼等の音が響き渡る。
時間が数百年タイムスリップした気分で、
唯々見とれてしまった。
石鎚山の険しい峰と合まって忘れられない体験である!



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